90年代前半で最高得点の9999点を達成した曲を紹介しています。5曲目は「黄砂に吹かれて / 工藤静香」です。1989年9月6日発売、9月21日放送回で初登場で2位に登場し、2週目9月28日放送回(本家ベストテン最終回)で初の総合1位。3、4週目はハガキ以外3部門1位で王手、5週目で遂に満点を達成しました。その後8週目まで総合1位をキープし、通算7週連続総合1位を獲得しました。これは「恋一夜」が持つ6週1位を更新し、自己最高記録となります。(1、2週目は本家ベストテンのデータを使用、通算記録も本家データと合わせています)
満点の勝因はやはりハガキです。前コラムでも触れましたが女性歌手がハガキで1位を取ることは非常に難しく、この曲も他3部門で圧倒的な強さを誇っていながらハガキではこの週1回のみ1位でした。それでも12週目の「太陽がいっぱい / 光GENJI」、10週目の「ROCKIN’MY SOUL / 男闘呼組」が息切れし始め、また、3週目の「Myself-風になりたい- / 徳永英明」、2週目の「ひとりぼっちにしないから / 田原俊彦」が追い上げてきた間隙を縫って1位を奪取、見事満点を達成しました。
当時の彼女といえば、「MUGO・ん…色っぽい」「恋一夜」「嵐の素顔」と、大ヒットを連発。この「黄砂に吹かれて」は前記3曲の良いとこ取りをしたような、ヒット曲としてのバランスが非常に優れた曲だと思います。中島みゆきの独特な詞世界、ドラマティックなバラードと激しいロックの中間にあり、適度にテンポ感のあるカラオケ受けする曲調。そんな集大成ともいえる1曲にも恵まれ、いよいよ中森明菜に代わり新・ベストテンの女王となりつつあった、そんなタイミングでの本家ベストテン終了、そして1年以内に他の歌番組も続々終了と、それまでの追い風が一気に向かい風に変わってしまった。他の80年代アイドル達が時代に合わせて生き残りをかけていく中、彼女はあえて?なのか売り方を変えず、積極的にタイアップを取ることもなく4か月毎のリリースペースを崩さず、少なくなった歌番組をメインに活動を続け、それでもしぶとくヒットを出し続けたのです。90年代前半の5年間ランキング・歌手別では得点3位、首位獲得週数3位、ベストテン登場週数ではなんと1位、と、この時代を代表する結果を残しています。
さて、時代を遡って紹介してきた9999点獲得曲ですが、以上の5曲で終わりとなります。本家ベストテンでは12年の歴史のうち、「YOUNGMAN / 西城秀樹」の1曲のみでした。80年代後半あたりから徐々にヒット曲の短命化が起こり始めていましたが、良い言い方をすれば一時に集中してヒットするため4部門1位=満点が出やすい状況になっていったのかもしれません。それでも紹介した5曲は「一時のヒット」の括りに入るものではない、この年代を象徴する5曲であったと感じます。