中山美穂全曲紹介

 来年のデビュー40周年を目前に急逝した中山美穂の90年代前半の活躍を検証します。80年代後半に歌とドラマを両立する先駆者としてアイドル界のトップに立ち、一旦のピークを迎えたものの、次のステップに進まざるをえないのがアイドル稼業。歌番組が続々終了し、そのダメージは彼女も例外ではありませんでした。しかし事務所サイドは既に次の一手を打っていた。88年頃から歌謡曲テイストを排除しオシャレ路線楽曲で地盤を固めつつ、89年1月期主演フジ月9ドラマ「君の瞳に恋してる!」、つづく90年1月期主演TBSドラマ「卒業」では敢えて主題歌をやらず、「ROSECOLOR」「Midnight Taxi」といった非売れ線ムード曲をしっとりと歌ったことで、世間のイメージとしての脱アイドルを自然に行い、大人の女優に成長したタイミングで再びの主題歌「愛してるっていわない!」をロングヒットさせました。敢えて主題歌をやらない期間を設けたことで80年代の残り香をきちんと消し、新時代の雰囲気を纏うことに成功したのです。元々同性ファンの比率がアイドル界随一で、文句の付けようが無い”美人”の代名詞でしたが、その逸材を生かすも殺すも売り方。時代の移り変わりに対して柔軟に気付かれないように(←これ大事)対応していくマネジメント力、あっぱれです。これこそがライバル工藤静香と共に90年代を生き抜けた一番の理由だと私は考えます。
 その後も年1ペースでドラマに合った、本人の意思が反映されてない(と思える)主題歌をヒットさせつつ、他のシングルアルバムでは好きなことやらせてもらいますと、自身の趣味を色濃く出していくという、なかなか面白い活動を続けました。個人的な好みだとミディアムバラード主題歌よりも「セミスイートの魔法」「Rosa」「Mellow」になりますが、「Rosa」がタイアップなしでロングヒットしたことは、やはり皆さんバラードよりダンサブルな美穂がお好みなんですね、と。
 5年間ランキングでは「世界中の誰よりきっと」を含まずの集計でも、歌手別得点8位、歌手別ベストテン登場週数6位60週を記録しており、相変わらず番組の華となっていた事でしょう。合掌。